モノクロ・フォトエッセイ:中野 成隆


アナログ写真とデジタル写真 

 デジタル画像の処理については近年飛躍的な進歩があり、画像処理能力とその利便性は目を見張るものがあります。充分に高画質のカメラがあれば、建物 撮影のときにあおりを利かせる必要はありません。その画像処理はデジタル暗 室(パソコンの画像処理ソフト)で簡単に出来ます。ゾーンシステムで必要な 画像の濃度分布も簡単に確認できますし、レベル調整やトーンカーブを操作し てその変更も可能です。アナログ暗室で行う覆い焼きなどのプリントテクニッ クは全てコンピューターの画面上で操作できます。さらに失敗すればもとに 戻ってやり直せば良い。気分が乗らなければ、作業を途中で止めて明日に回す こともできます。

 良いことずくめのデジタル画像ですが、弱点があります。印刷に使うときは 問題にならないのですが、作品プリントを作るとき、デジタル画像はアナログ に比べ画像情報が少ないのです。画素数においては昨今の目覚しい技術開発に より概ね問題がなくなりました。 問題になっているのは濃度情報です。特に、濃度情報のみで成り立ってい る白黒では致命的です。デジタル画像は銀塩白黒プリントとどう違うかと言 うと、デジタル画像濃度域は0から255(8Bit)です。純黒は濃度0、白は 255。それで終わりです。それ以上もそれ以下も存在しません。さらにデジ タル画像をインクジェットプリンターで出力する場合、インクジェット紙が限 界までインクを吸収したときが最高濃度です。それ以上インクを塗布すると用 紙に吸収されないインクが発生し、その部分は全くデティールのないベタ黒に なります。そのインク量は紙のコンディションにより変わりますから、その都 度微調整が必要です。インクが少なければしまりの無い黒になります。 

 銀塩では、純黒域はガンマの肩にあたり、デティールが柔らかく圧縮されま すので表現可能なエリアになります。デジタル画像では難しい黒の中の黒、白 の中にかすかに見える映像が出せるのはそのためです。鑑賞目的のプリントの 場合、この描写性能は重要なので、白黒作品を作ろうとするときは銀塩白黒プ リントを選択し、暗室にこもって面倒なプリント作業を行うことになるのです。 ちなみに、カラーの場合は、作品も含めた全ての写真にデジタル技術を利用し ています。 

nakano

中野成隆/銀・ギラ・Ag 2009写真展出品「チベットの昨日」より


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